2018(平成30)年度 活動の紹介
1. 診療体制
●診療方針
臨床検査科・病理診断科は検査技師長以下約30名の検査技師から構成されています。平成29年度まで中核スタッフとして尽力された中島副臨床検査技師長は平成30年度より相模原病院に転任され、後任に霞ケ浦医療センターから松本副臨床検査技師長が着任しました。医師スタッフは臨床検査科医師2名、病理診断科医師3名の体制は変わらず、検体管理加算Ⅳ、病理診断加算Ⅱも維持されています。平成30年度も検査の精度向上のため各種外部精度管理(日本医師会精度管理、日本臨床衛生技士会臨床検査精度調査、群馬県臨床検査精度調査、日本病理精度保証機構)を受審し、第52回日本医師会の精度管理で100点(満点)を頂きました。
検体検査では従来紙伝票で運用していた血液疾患特殊検査(染色体、遺伝子、細胞表面抗原)やLST、保険適応外検査を電子カルテからオーダーあるいは伝票入力可能としました。また引き続き検体検査結果に対する臨床判断補助のためのコンサルトに応需しています。生理検査では超音波検査・脳波検査等の件数増加に対して業務の見直しや機器・人員のやりくりで要望に応えています。当院最初の経験であった脳死判定・臓器移植ドナー確保に対しても生理検査を中心に検査科として貢献できました。細菌検査ではAST発足により血液培養等の微生物検査に対する需要は増大し、更新された細菌培養検査機器が的確で迅速な起因菌の検出に効果を発揮しています。さらにICT・AST等職種横断的な院内活動にも積極的に関与し、感染防止対策加算Ⅰ・感染防止対策地域連携加算Ⅰに対応しています。輸血管理室では血液資源の有効利用と医療安全の面から輸血や血漿分画製剤の安全な供給と適正な管理を推進し、適正使用にご協力を頂いた結果、輸血廃棄率は2.0%以下に減少、アルブミン/RBC比も2.0を下回り、引き続き輸血管理料Ⅰの適正使用加算を維持できています。病理部門では、がんゲノム医療の発展と標的治療薬の進歩から、遺伝子変異を検出するコンパニオン診断の需要が増加し、そのための標本処理作業がふえています。患者数の増加に伴いすべての分野において検査件数は増加の一途にあり、検査技師人員、検査機器、検査スペースともに足らない状態に陥ってきていています。いずれも将来に向けて増員、増設、拡張等を考えるべき時期に来ており、新病棟完成後の旧棟再整備においてかなえられることを切望します。
病院全体の職員数増に伴い定期健康診断検査数も著増し、50歳以上の健診に対する腹部エコー検査も定着しました。研修医・看護師・若手臨床検査技師・実習生の教育研修や各科臨床研究の補助も必要であり、可能な限り協力しています。これらの業務を支援するのも当部門の重要な役割と考えています。また、関連学会・研究会での発表、講演会・研修会への参加を通じての自己研鑽を図ることも必要であり積極的に行なわれています。臨床検査科・病理診断科は今後とも病院の重要なインフラとして、正確で迅速な検査の安全な実施に加え、採算項目の院内検査化(特殊検査の外部委託)、保険適応外検査運用の厳格化、必要経費の削減(材料費の見直し)など経営面にも考慮し、効率よく的確な臨床検査業務を通じて病院の健全な運営に関与していきたいと考えています。
●組織体制・医療設備
臨床検査部長 内山 俊正 検査科運営全体に関する業務指導
病理診断部長 小川 晃 病理検査全体に関する業務指導
臨床検査科長 猿谷 真也 検査科運営全体に関する業務指導
病理医師 田中 優子 病理診断
病理医師 宮永 朋実 病理診断
臨床検査技師長 峰岸 正明 検査事務掌理・部外との折衝・受付・他
副臨床検査技師長 松本 善信 技師長補佐・消耗品(医療用、事務用)・生理・他
血液・一般・輸血管理
担当 : 山口 徳実主任 白井 洋平主任 竹内 紗耶香技師 加藤 久子技師
【業務内容】
血液検査、尿一般検査、輸血検査(管理)
【医療機器】
自動尿分析装置(アークレイ オーションMAX・AX4030)・半自動尿分析装置(アークレイオーションイレブンAE-4020)全自動輸血検査装置(Auto-Vue)製剤管理システム(BTDX2)・全自動血液計数装置(シスメックス XN-3000・XN-1000)・全自動血液凝固線溶測定装置(シスメックス CS-5100)2台・血液ガス分析装置(シーメンス Rapid Point500)・PA-200(血小板凝集能)・自動赤沈測定機(フィンガルリンク Roller20PN)
生化学・免疫血清
担当 : 小林 伸彦主任 飯田 あいみ技師 小林 良太技師 浦田 佑子技師(2018.07~) 黒岩 いすず技師 (~2018.6)
【業務内容】
生化学検査、免疫血清検査
【医療機器】
生化学免疫自動分析装置(アボット Ci8200、Ci-16000)・免疫自動分析装置(ロシュ cobas e411)・免疫自動分析装置(シスメックス HISCL800)・グリコヘモグロビン測定装置(アークレイHA-8181)・血糖測定装置(アークレイ GA-1171)
生 理
担当 : 藤本 敬久主任 黒木 政宏主任 西村 千寿子技師 原 沙織技師 永井 涼花技師 宮下 真依技師 萩原 理恵技師 齋藤 真純技師 徳江 風花技師
【業務内容】
生理機能検査(心電図・肺機能・超音波検査等)
【医療機器】
超音波診断装置(GE Vivid E9・フィリップスiE33・東芝aplio400 2台・東芝 aplioMX・東芝Nemio)脳波計(日本光電 Neurofax EEG-1714, EEG-1250)・心電計(フクダFCP-7451)・肺機能測定装置(チェスト チェスタック7800) ・簡易肺機能測定装置(チェスト チェストグラフHI-105T)・血圧脈波計(コーリン フォルム)・エルゴメータ負荷心電計(フクダ MLX-1000 Mulex、ロード社 エルゴメータ)・オージオメータ(AA-79S)・骨密度測定装置(アロカAOS-100NW)・筋電計(日本光電MEB-2204)・重心動揺計(アニマGRAVICORDER GP-31 )・体成分分析装置(インボディジャパン Inbody S10)・呼吸代謝測定装置(ミナト医科学 モバイルエアロモニタ AE-100i)
細 菌
担当 : 出井 美智子主任 伊藤 晋子技師 浦田 佑子技師(~2018.06) 本木 裕也技師(2018.4~)
【業務内容】
微生物検査、迅速検査(インフルエンザウイルス・ノロウイルス等)
【医療機器】
全自動同定感受性検査システム(BD フェニックス M50)・血液培養自動分析装置(BD バクテック FX)・PCR(COBAS AmpliPrep、COBAS TaqMan48)・全自動抗酸菌培養検査システム(BACTEC MGIT960)
病 理
担当 : 遠藤 隆主任 宮山 和樹技師 土橋 実加技師 原田 邦彦技師 黒岩 いすず技師 (2018.7~) 橋本 茂樹技師(~2018.6) 磯貝 美奈子技師
【業務内容】
病理組織検査、手術中迅速検査、細胞診検査、病理解剖等
【医療機器】
ミクロトーム(ヤマト リトラトームREM700・ROM380)・クリオスタット(ライカ CM1950)・パラフィン包埋ブロック作製 装置(サクラ TEC)・自動免疫染色装置(ロッシュ ベンチマークXT)・液状化検体細胞診(HOLOGIC ThinPrep5000 プロセッサ AutoLoader)・臓器標本撮影装置(杉浦研究所 MPS-8-LD)・自動染色装置(サクラ プリズマ・ロッシュ HE600)・超低温フリーザー(パナソニック MDF-U33V-PC)・開放式プッシュプル型換気装置(興研 MU-01・MD-01)・ミクロトーム(ヤマト リトラトームREM-710)・自動包埋固定装置(ライカ PELORIS Ⅱ)・安全キャビネット(日本エアーテック AIRTECH)
採血室・中央処置室受付
担当 : 山居 伸以技師 各部署交代制 受付事務 吉田 詩織
【業務内容】
外来患者採血業務、病棟予約採血管発行他
【医療機器】
採血業務支援システム(オールインワン型自動採血管準備システムBC・ROBOー888
2. 診療実績
●精度管理・改善事項・検査数
① 外部精度管理
1) 日本医師会精度管理(第52回):100.0点
2) 日本臨床衛生検査技師会臨床検査精度管理調査参加 精度保証施設認証の継続
3) 群馬県臨床検査精度管理調査:群馬県臨床検査値標準化施設認定
4) 日本病理精度保証機構:2018年度 外部精度評価参加
② 2018年度(平成30年度)に実施した経営収支改善事項
2018.4 予約外エコー検査(当日エコー)の拡大
2018.8 心肺運動負荷検査(連続呼気ガス分析)開始
2018.8 Inbody・基礎代謝検査の拡大
2018.9 プロカルシトニンを安価な試薬へ変更
2018.11 ホルター心電図検査の拡大
2019.1 肝硬度測定検査 開始
2019.2 地域医療連携腹部エコー検査 開始
③ 2018年度(平成30年度)に実施した業務改善事項
2018.4 消化器EUS-FNAの出張業務を開始
2018.6 カルニチン分画、FFA、ADAMTS13活性・インヒビター、25-OHビタミンD、カルプロテクチンの保険収載に伴うオーダーリング化
2)病理:自動包埋固定装置(ライカ PELORIS Ⅱ)・安全キャビネット(日本エアーテック AIRTECH)・
2018.6 脳波検査枠の変更
2018.6 甲状腺エコー、その他体表エコーの予約検査化
2018.7 下肢静脈エコーの予約検査化
2018.8 抗トリコスポロン・アサヒ抗体、可溶性メソテリン関連ペプチドのオーダーリング化
2018.9 IgD、免疫グロブリン遊離L鎖κ/λ比のオーダーリング化
2018.10 レニン、アルドステロン負荷試験のオーダーリング化
2019.1 関節液結晶を外注から院内検査に変更
2019.1 手術室への血液製剤の搬送を、より患者取り違えが起こりにくい運用へ変更(検査技師の製剤搬送)
2019.1 DLST、ALST、血液疾患(G分染、FISH法)伝票オーダーをオーダーリング化
2019.1 外注紙伝票を電子カルテに取込み、電子カルテ上で記入印刷が出来るように変更
④ 2018年度病理解剖件数:別表1.参照 2018年度臨床検査件数及び点数:別表2.参照
3. 臨床研究のテーマ
① 臨床各科の臨床研究の検査に関する補助・支援を積極的に行なう。
十分な精度管理を実施し、必要な検査データを提供・検体の分離・保存・搬送業務などの支援を行なう。
② 日本臨床衛生技師会、国立病院臨床検査技師会関信支部、群馬県臨床検査技師会などに関連した臨床研究を行なう。
群馬県の合同輸血療法委員会、感染対策協議会、検査標準化委員会等の調査研究にも参加する。
③ 内科系疾患に合併するDIC患者における凝固線溶マーカーの動態研究(日本血栓止血学会での共同研究)
④ 先天性血液凝固異常症(特に血栓性素因)に関する遺伝子診断(三重大学臨床検査医学科との共同研究)
4. 研修教育方針
① 検査技師養成学校からの臨床実習生を受け入れて教育・技術指導を行なう。
② 臨床研修医に対する必須技能として超音波検査技術指導および血液型クロスマッチ検査等の手技指導を行なう。
③ 臨床研修医に対するCPCでの病理所見示説指導を行なう。
④ 各種学会・研究会・講習会への積極的な参加による研修・研鑽をはかる(別掲論文・学会発表参照)。
⑤ 群馬県臨床検査技師会理事、輸血研究班幹事、群馬県標準化委員会基幹施設として技師の資質向上を目指す。
5. 今後の展望
① 臨床各科の要望に対して正確で迅速な検査結果を確実に提供する努力を継続する。
② 医療制度・病院経営・教育研修機能をふまえた効率的な病院のインフラとしての機能を果たしていく。
③ 新病棟を建設後の旧病棟の再整備において、手狭になった検査科スペースの拡充と利便性の向上を図っていく。
④ 以上の各項目を達成するためさらに人的資源の確保・検査機器整備の更新をはかる。
⑤ 将来的なISO15189の認定を意識して標準操作手順などの書類の整備を進める。
6. 病理解剖・臨床検査件数