2020(令和2)年度 活動の紹介
1.概況(診療体制)
●薬剤部スタッフ
薬剤部は、薬剤部長1名、副薬剤部長1名、調剤主任1名、製剤主任1名、薬務主任1名、医薬品情報主任1名、薬歴管理主任1名、治験主任1名、薬剤師16名、非常勤薬剤助手2名の総勢27名でスタートしたが、部員転出入、退職等もあり年度末では26名となった。
●基本方針
(1)薬物治療への貢献
・薬剤管理指導件数の増加と質の向上(特に安全管理が必要な医薬品に対する服薬指導の実施率の向上)
・病棟薬剤業務の充実
(2)医療安全への取り組み
・各種手順書の遵守と継続的な見直しを行い、調剤過誤等の防止・縮減に努める。
・病棟薬剤業務の拡充などにより、院内における薬剤関連インシデント縮減を図る。
(3)臨床研究への関与
・受託研究(治験・製造販売後調査)を支援する。
・薬剤部員による臨床研究活動の活性化を図る。
(4)病院経営への貢献
・後発医薬品の使用数量シェアで90%以上を維持する。
・期限切れ医薬品の削減、消耗品等経費削減に努める
(5)チーム医療への参画
・薬剤の専門職として積極的にチーム医療に関わる。
(6)薬薬連携の推進
・高崎市薬剤師会をはじめとする地域薬剤師会との連携を推進し、患者の薬物治療への薬剤師のかかわりを一貫させる。
・外来癌化学療法での連携の推進を図る.
(7)薬剤関連施設基準の取得と維持継続に向けた取り組み
・現在、取得している施設基準の維持継続を図るとともに、新たな施設基準の取得にも積極的に取り組む。
2.活動報告(診療実績)
(1)調剤業務
本年度は、入院処方箋は88,261枚、対前年度101.3%であった。外来院内処方箋が4,213枚、対前年度38.2%であり、院外処方箋発行率は94.3%と前年度を7.3%上回った。
医薬品購入費の抑制、病棟薬剤業務の充実や薬剤管理指導を増やすためにも院外処方箋の発行を推進した成果であると考える。
また、昨年度末に患者サポートセンターが新設され、窓口業務として入院予定患者のアレルギー歴・服用薬の確認を3,435件(286件/月)行えており、他部署と連携が強化できたと考える。
(2)注射薬業務
本年度は入院注射箋201,974枚、対前年度96.5%、外来注射箋18,849枚、対前年度87.9%であった。外来化学療法の増加に伴い、薬剤の単価が上昇し高額な医薬品を多数扱うことから在庫管理には細心の注意を払っている。
(3)病棟業務関連
薬剤管理指導件数は15,302件算定し、月平均1,275件だった。病棟薬剤業務実施加算1は25,915件、病棟薬剤業務実施加算2は8,665件だった。病棟薬剤業務実施加算は昨年度と同程度の件数を算定しているが、薬剤管理指導件数は増加している。増加の理由として、病院病床数が増床したこと、薬剤部内での業務効率の向上を図ったことが要因となっている。また、2021年1月より新型コロナウイルス感染症対応病棟で感染エリアでの指導を開始し、病棟スタッフの負担軽減に貢献している。
チーム医療では感染制御チーム(ICT)・抗菌薬適正使用支援チーム(AST)に専従で薬剤師を配置し、栄養サポートチーム(NST)、緩和ケアチーム、認知症ケアサポートチーム(DCT)、糖尿病療養指導プロジェクトチーム、褥瘡チーム、摂食嚥下回診チーム、PEGチーム、術後疼痛管理チーム(APS)などに専任の薬剤師を配置し、薬剤師としての専門性を発揮している。
(4)がん化学療法関連業務
2020年度の抗がん剤調製件数は6,533件(544件/月)、がん患者指導管理料ハ請求件数454件(38件/月)であった。また、2020年度の診療報酬改定において、外来での抗がん剤治療の質を向上させる観点から「連携充実加算」が新設されて、算定に必要な要件を満たすための体制整備などを行い、7月より連携充実加算の算定を開始し、算定件数2,207件(245件/月)となった。保険薬局との連携のための研修会も9月に開催した。抗がん剤調製前にはレジメンとの照合や患者の状態等を確認し重篤な有害事象を回避するよう複数の薬剤師によるチェックを行っている。がん薬物療法に精通したがん薬物療法認定薬剤師2名を中心に5名ががん患者に説明や指導、副作用のフォローを行っている。今後の課題として、がん化学療法に精通した資格を持つ薬剤師の育成・教育がある。
(5)医薬品情報管理業務
安全かつ最適な薬物治療のために必要な医薬品情報の収集、評価、整理し各部署へ情報提供を行っている。医薬品情報誌「薬匙」は月1回定期発行をしており、院内のみならず、地元薬剤師会にも配布している。その主な掲載内容は、医薬品情報、薬事委員会報告(薬事委員会は年4回)、不良在庫の使用促進のため期限切れ間近の薬剤の在庫量、薬剤部の各種業務報告である。
また、医薬品の市販後安全対策に資するため、院内での副作用情報の収集にも取り組んでおり、医薬品・医療機器等安全性情報報告制度に従い規制当局に積極的に報告するよう努めている。
医薬品情報は膨大であり、各部署からの質疑に対応するため病棟担当薬剤師と連携して、医薬品情報管理業務に取り組んでいる。
(6)医薬品管理業務
医薬品購入費が昨年度比88.3%、金額にして約260,000千円が減少している。これは、新型コロナ禍における患者数の減少や後発品への切り替えを積極的に行ったことが主な要因であり、とくに抗がん剤の後発品への切り替えの影響が大きかった。病院経営の観点から、医薬品購入比率を抑えることは重要であり、適正な医薬品の入出庫等の管理、後発医薬品の採用促進等に取り組んでいる。
今年度は、薬事委員会において、新規採用品目数48品目、採用中止品目数90品目、後発医薬品への切り替え57品目を行った。その結果、採用品目数は1,222品目となった。積極的な切り替えにより後発医薬品品目割合89.7%、金額割合51.6%、数量割合94.6%となった。
(7)病院実務実習
11週間の病院実務実習として、複数の大学から薬学生を毎年受け入れ、薬学学生の臨床教育に貢献している。
2020年度は新型コロナウイルス感染症の拡大によりリモート研修を取り入れ実施した。2期にわたって高崎健康福祉大学7名、明治薬科大学1名、及び帝京大学1名の3つの大学から合計9名の学生を受け入れた。
(8)専門・認定薬剤師資格取得状況
2020年度末での専門・認定薬剤師取得状況は、以下のとおりである。
・日本病院薬薬剤師会がん薬物療法認定薬剤師:2名 ・日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師:1名
・日本臨床栄養代謝学会NST専門療法士:2名 ・日本臨床腫瘍薬学会外来がん治療認定薬剤師:1名
・日本糖尿病療養指導士:1名 ・日本薬剤師研修センター認定実務実習指導薬剤師:4名
・公認スポーツファーマシスト:2名・日本臨床救急医療学会救急認定薬剤師:1名
・厚生労働省日本DMAT登録:2名・日本麻酔科学会周術期管理チーム認定薬剤師:1名
3.今後の展望
薬物療法の一翼を担う薬剤師として、質の高い薬物療法への貢献、医療安全の推進及び、健全な病院経営への貢献を大きな柱として今後も取り組んでいくこととしている。
これらを実現するためには個人のスキルアップも必須であることから、臨床研究や認定取得等と推進することとしている。質の高い薬物療法を実現するためには、在宅での管理も必要となることから、地域の保健薬局との連携強化にも取り組んでいく予定である。