2022(令和4)年度 活動の紹介
1. 概況(診療体制)
薬剤部は、薬剤部長1名、副薬剤部長1名、主任6名、薬剤師20名、非常勤薬剤助手2名の総勢30名でスタートし、部員転出入、退職等があったものの、最終的に年度末には30名体制となりました。
2. 活動報告(診療実績)
1) 調剤業務
入院処方箋は103,257枚、対前年度103%でした。外来院内処方箋が2,943枚、対前年度94.1%であり、院外処方箋発行率は96.3%と前年度を0.4%上回りました。医薬品購入費の抑制、病棟薬剤業務の充実や薬剤管理指導を増やすためにも院外処方箋の発行を推進した成果であると考えます。入院・検査予定患者のアレルギー歴・服用薬の確認件数は4,835件(403件/月)、対前年度106.9%と前年度を上回りました。また、入院時持参薬確認件数は8,520件(710件/月)でした。
2) 注射薬業務
入院注射箋227,492枚、対前年度111.7%、外来注射箋23,187枚、対前年度102.8%でした。外来化学療法の増加に伴い、薬剤の単価が上昇し高額な医薬品を多数扱うことから在庫管理には細心の注意を払っています。
3) 病棟業務関連
薬剤管理指導件数は17,548件算定し、月平均1,462件と対前年度107.1%でした。病棟薬剤業務実施加算1は29,960件(対前年度108.3%)、病棟薬剤業務実施加算2は9,960件(対前年度102.6%)でした。病棟薬剤業務実施加算及び薬剤管理指導件数共に昨年度より増加しています。また、新型コロナウイルス感染症対応病棟で感染エリアでの指導を継続しており、病棟スタッフの負担軽減に貢献しています。チーム医療では感染制御チーム(ICT)・抗菌薬適正使用支援チーム(AST)に専従で薬剤師を配置し、栄養サポートチーム(NST)、緩和ケアチーム、認知症ケアサポートチーム(DCT)、糖尿病療養指導プロジェクトチーム、褥瘡チーム、摂食嚥下回診チーム、PEGチーム、術後疼痛管理チーム(APS)などに専任の薬剤師を配置し、薬剤師としての専門性を発揮しています。
4) がん化学療法関連業務
抗がん剤調製件数は全体で7,479件(623件/月)、がん患者指導管理料ハ請求件数387件(32件/月)、連携充実加算算定件数3,647件(304件/月)でした。保険薬局との連携のための研修会も9月に開催しました。抗がん剤調製前にはレジメンとの照合や患者の状態等を確認し重篤な有害事象を回避するよう複数の薬剤師によるチェックを行っています。がん薬物療法に精通したがん薬物療法認定薬剤師2名を中心に5名でがん患者に説明や指導、副作用のフォローを行っています。
5) 医薬品情報管理業務
安全かつ最適な薬物治療のために必要な医薬品情報を収集、評価、整理し各部署へ情報提供を行っています。医薬品情報誌「薬匙」は月1回定期発行をしており、院内のみならず、地元薬剤師会にも配布しています。その主な掲載内容は、医薬品情報、薬事委員会報告(薬事委員会は年6回)、不良在庫の使用促進のため期限切れ間近の薬剤の在庫量、薬剤部の各種業務報告です。また、院内での副作用情報の収集にも取り組んでおり、医薬品・医療機器等安全性情報報告制度に従い規制当局に積極的に報告するよう努めています。医薬品情報は膨大であり、各部署からの質疑に対応するため病棟担当薬剤師と連携して、医薬品情報管理業務に取り組んでいます。
6) 医薬品管理業務
医薬品購入費が昨年度比117.6%、金額にして約3.89億円増加しています。これは、患者数の増加や高額医薬品が新規採用されたこと等が主な要因です。一方、後発医薬品への積極的な切り替えは継続しており、後発医薬品の品目割合87.6%、金額割合59.9%、数量割合95.1%と、金額割合は前年度より増加しました。病院経営の観点から、医薬品購入比率を抑えることは重要であり、適正な医薬品の入出庫等の管理、後発医薬品の採用促進等に継続して取り組んでいます。
3. 研修教育方針
1) 病院実務実習
11週間の病院実務実習として、複数の大学から薬学生を毎年受け入れ、薬学学生の臨床教育に貢献しています。2022年度は高崎健康福祉大学10名、日本薬科大学2名、昭和薬科大学1名、明治薬科大学1名の合計14名の学生を受け入れました。
2) 専門・認定薬剤師資格取得状況
2022年度末での専門・認定薬剤師取得状況は、以下のとおりです。
・日本病院薬薬剤師会がん薬物療法認定薬剤師:3名
・日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師:2名
・日本臨床栄養代謝学会NST専門療法士:3名
・日本臨床腫瘍薬学会外来がん治療認定薬剤師:1名
・日本糖尿病療養指導士:2名
・日本薬剤師研修センター認定実務実習指導薬剤師:6名
・公認スポーツファーマシスト:1名
・日本臨床救急医療学会救急認定薬剤師:1名
・厚生労働省日本DMAT登録:1名
・日本麻酔科学会周術期管理チーム認定薬剤師:1名
・日本小児臨床薬理学会/日本薬剤師研修センター小児薬物療法認定薬剤師:1名
・日本災害医学会災害医療認定薬剤師:1名
・日本循環器学会心不全療養指導士:1名
4. 今後の展望
薬物療法の一翼を担う薬剤師として、質の高い薬物療法への貢献、医療安全の推進及び健全な病院経営への貢献を大きな柱として今後も取り組んでいくこととしています。これらを実現するためには個人のスキルアップも必須であることから、臨床研究や認定取得等を推進するとともに、質の高い薬物療法を実現するためには、在宅での管理も必要となることから、地域の保険薬局との連携強化にも取り組んでいく予定です。