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2019(令和元)年度 活動の紹介

1. 診療体制

●診療方針

 当院小児科は、西毛地区における中核施設の一つとして、小児科の二次入院診療を中心とした診療をおこなっています。対象地域は高崎・安中地区を主として、埼玉県北部を含めた隣接各地域に及んでいます。また、休日・夜間の時間外の小児救急においては、当院、藤岡総合、富岡総合の3病院による西毛地区の二次輪番体制により、地区内で24時間365日の二次救急を中心とした診療を実施しています。小児科の急性期医療では、各種感染症の流行により診療需要の波動が大きく、運営上の対応の難しい点となっています。
 2019年度の常勤医師7名のうち、当直可能な医師は4名で、専門領域は、五十嵐が新生児、倉田は内分泌・代謝、德永・佐藤・内田が呼吸器・アレルギー、小笠原が腎臓となっています。八木は、専門医を目指す立場で一般小児科の臨床経験を積みながらの勤務となりました。また、外部よりの非常勤として、神尾 彩乃 医師(神経)、西澤 医師(消化器)にそれぞれ専門外来を担当していただきました。専門的診療を要する小児の慢性疾患は、希少疾患が多いこともあって、通院での管理を二次病院の業務とせざるを得ない面があり、外来運営面の課題の一つとなっています。また、小児外科外来を小児科外来ブースで月二回・半日ずつ開設していて、小児外科疾患の初診、定期的処置に対応していただいています。小児科にて診断に難渋した外科的症例のコンサルトの実績も多く、大きな意味のある外来と考えています。
 周産期医療はNICU(社会保険未認定)6床と南4階新生児室を有機的にリンクさせて産科との協力のもと32週以降必要な新生児の入院診療を行いました。新生児医療の高度な技術、設備を用いた集中治療を要する児は、現状では原則として群馬県立小児医療センターなどの三次医療機関にお願いしていますが、6床が満床に近くなることも多く、外部からの新生児搬送受け入れが困難な日数も多くありました。
 時間外診療については、当院には月間20日前後の二次輪番の担当があり、常勤医師に加え、外部からのパート勤務医師にお願いして、主に土曜日の日直当直および一部金曜日の当直を担当していただき、当院の責をはたす状況となっています。

 

●医療設備

 超音波診断装置 外来、病棟用各1台、新生児用人工呼吸器3台、新生児用鼻腔式陽圧呼吸補助装置(Si-PAP)3台、保育器(閉鎖式・開放式)

 

2. 診療実績

●症例数・検査数・治療

 2019年度の小児科入院総数は一般・新生児を合わせ1,120例でした。月別では、ここ数年は7-8月に多い傾向がみられます。食物負荷試験等の夏休みを利用した入院に加え、RSウイルス等の流行が背景にあると考えられます。一般病棟では各種感染症、川崎病、痙攣性疾患などが目立ちますが、喘息、アナフィラキシー、食物アレルギーなどのアレルギー疾患の割合も多くなっています。また、食物アレルギーの診療に安全に対応するため、入院での食物負荷試験も実施しています。事故・虐待にかかわる例は確実にみられており、CAPSなどの院内組織を通してMSWや医療安全などの関係職種・部門と緊密なかかわりをもちながら対応に努めていますが、将来ある子どもを守ってゆく活動への責任を感じています。
 新生児病棟(NICU)は在胎週数32週以上の児を対象に入院診療を行い、病床は6床ですが、西毛地区においては、院外より新生児受け入れを行っている数少ない施設の一つとして、新生児医療においても二次病院としての診療を行っています。低出生体重児、呼吸障害のある児、新生児感染症などが主な診療対象となっています。機械的人口呼吸管理を要する例もみられています。
 外来では、地域支援病院として、紹介患者の受け入れと、逆紹介の推進に力を入れて、不必要には肥大化しないように努めています。一方で、学校保健分野等での二次健診業務とそれに引き続く経過観察や、慢性疾患の診療などが、主に二次病院の業務となっており、一定数の外来診療は行わざるを得ず、学校の長期休暇の時期には、患者が増える傾向があります。2019年度も、ほぼ前年並みの体制・受診状況でした。

年度別入院数

月別入院患者数

疾患別入院患者数

疾患別入院数(新生児)

 

3. 臨床研究のテーマ

 NHO共同研究に参加するとともに、日本小児科学会群馬地方会や、群馬県小児保健会などにおいて症例報告が主ではありますが、若手医師を中心とした発表機会を設けています。また、上級医はその専門分野において、研究日に群馬大学小児科をふくめた院内・院外での研究活動を行い、その成果を学会などで、発表しています。

 

4. 研修教育方針

 2019年度は日本小児科学会認定の小児科専門医4人を擁しています。2011年度より日本小児科学会専門医研修施設の指定を受け、専門医を目指す若手小児科医の育成も重要な責務となっています。当院は入院症例が比較的充実していると自負しており、小児科専門医を目指す若手医師に小児科医としての基礎を症例を通じて身につけていただくこと、初期研修医には小児医療の具体的イメージを明確にしていただくこと、小児への臨床的アプローチの特徴を理解していただくことを目標として、研修の指導を行っています。研修内容の実際は、ともすると流行疾患により左右されがちであり、上級医とともに臨床に取り組んでゆくなかで、一定の成果が上がる充実した研修が積んでいただけるよう配慮していきます。
 2019年度も新生児蘇生法(NCPR)一般コースの研修会を実施することができました。職員のスキル向上に少しでも貢献できればと願っています。

 

5. 今後の展望

 県内の小児科医は全体では増加していますが、二次病院で当直勤務への対応が可能な医師の数は漸減傾向です。群馬県の出生数は減少の一途で、予防接種の普及や、抗ウイルス薬などの治療の変化とともに、小児の入院医療の需要も縮小すると考えられ、小規模施設が散在していると、地域全体の診療レベルを質・量ともに低下させることが懸念されます。また、一方では2024年度実施予定の働き方改革に適応できない長時間勤務を行っている医師が群馬県の小児科勤務医の1/3程度いるという調査もあります。こうした背景において群馬県の小児医療を安定して持続的に提供できる体制を確保するためには、この地域を足場とする意欲ある医師を育て増やしてゆくことが喫緊の課題であり、このための教育機会を確保するためにも、また、24時間365日の対応を要請されている小児救急等の診療機会を確保するためにも、診療拠点の集約化・重点化の必要性・意義は大きいと考えます。これに加え、医師の活動をサポートするためのインフラ(例えば24時間保育および病児保育)等を考慮しながら、診療・教育・研究のバランスのとれた体制を維持してゆくことで、地域の医師が燃え尽きることなく働き続けることのできる環境を確保することが必要だと考えます。これは一医療機関の努力のみで達成できることではありませんが、当院では、群馬大学小児科の理解も得て2020年度より常勤医の二交代制と、小児病棟(北4階)の小児入院管理加算2の届け出と、社保加算の得られるNICU 6床、GCU 6床の届け出が可能な体制をとり、2020年4月から実施しています。これを基盤に、群馬県、とりわけ西毛地区における小児医療の拠点としての貢献ができればと考えています。

小児科