2023(令和5)年度 活動の紹介
1. 診療体制
●診療方針
聞こえ、味、匂い、めまいの感覚器を扱っています。繊細な感覚の治療には、医者の感性が関わってきます。患者さんの話をよく聞き、背景から病気を探ってゆきます。ふらつき、喉の違和感、舌の痛み、睡眠障害など、不定愁訴を訴える患者さんも耳鼻科に来ます。検査よりも、深い問診が大切と考えています。
重症感染症で首に膿瘍形成、進行した頭頸部癌で呼吸困難、激しい症例も紹介されます。血まみれの緊急手術も行います。地域の高齢者は、どんなに重症でも地元で治療して、道筋をつけるよう努力しています。
●医療設備
鼻手術用ナビゲーションシステム
ハイビジョン鼻内視鏡システム
ハイビジョン耳顕微鏡
多関節アーム式神経内視鏡
顔面神経モニタリングシステム
内視鏡先端洗浄システム
副鼻腔手術用骨軟部組織シェーバーシステム
頭頸部用超音波凝固切開装置
経口的手術用拡張器
2. 診療実績
●症例数
年間の手術件数も、入院患者数も年々増加しています。5年前の入院患者数53人が、今は218人です。手術件数は5年前の64件が、202件になりました。
3. 臨床研究のテーマ
顔面神経麻痺は、命にこそ関わりませんが、治らなければ、その後の人生が悲しみです。早期の大量ステロイド、抗ウイルス薬、顔面リハビリの3本立てで治療しています。過去5年、当院で治療したベル麻痺47人、ハント症候群10人の比較では、ベル麻痺の治癒率は96%なのに対し、ハント症候群は60%でした。精力的に治療をしても、帯状疱疹ウイルスには4割も負けてしまいます。顔麻痺を見つけたら、その日のうちにプレドニンを飲ませてから、当院に紹介してください。糖尿病があってもなんとかします。患者さんの年齢分布は、ベル麻痺は子供からお年寄りまで広く発症します。ハント症候群は、水痘ワクチンを打たなかった若年者と、抗体が切れた高齢者に多く発症しました。
4. 研修教育方針
手術を多く、のびのびと症例を積んでもらいます。
5. 今後の展望
嚥下機能手術を依頼されることが増えました。発声機能が失われても、口から食べてこそ、生きてゆく楽しみがあります。手術前の評価と、話し合いが大切です。時間をかけて、患者さんの為になる選択をしてゆきます。