2022(令和4)年度 活動の紹介
1. 診療体制
●診療方針
2012年4月から乳腺・甲状腺センターが設立され10年が経過しました。より専門性の高い医療を行うこと、チーム医療を充実させることを目的に現在も運営しています。医師(乳腺内分泌外科、内分泌代謝内科、形成外科、放射線科、病理診断科)、看護師、放射線技師、薬剤師、管理栄養士、メディカルソーシャルワーカーを交えたカンファレンスを定期的に開催しています。
乳腺疾患の診断においては、トモシンセシス3Dマンモグラフィはもとより、各診察室のベッドサイドに超音波を配置するなど、他院に先んじて配備された最新鋭の機器を用いた確実な診断を行っています。
治療の面では、乳癌に対してはサブタイプに応じて最新のレジメンを導入し、生存率の向上に努めるとともに、個々の症例に適した過不足のない薬物療法を行っている。乳房温存術が困難な乳がんに対しては、形成外科と協力し乳房再建術も標準的治療として行っています。
甲状腺領域においては、内分泌内科医と連携し、甲状腺・副甲状腺腫瘍、バセドウ病等に対して、根治性を重視しながらも安全面に配慮した手術を行っています。甲状腺がんについては放射線科医師と協力し,甲状腺がん術後再発予防のためのヨード放射線内照射も行っています。再発甲状腺がんに対しては分子標的薬治療も行っています。
近年遺伝性疾患(当科においてはBRCA陽性乳癌、RET融合遺伝子陽性甲状腺癌、RET遺伝子陽性甲状腺髄様癌など)に対する諸検査や手術および薬物治療が次々に保険承認されています。当院にも遺伝性腫瘍外来が開設され、患者本人およびご家族の意思決定がしやすい環境下で遺伝性疾患に対する診療を行っています。
地域連携の面ではがん診療連携パスを積極的に活用し、かかりつけ医との連携を継続的に推進しています。
●医療設備
3Dトモシンセシスマンモグラフィ、トモシンセシス画像診断下乳房専用組織生検システム、センチネルリンパ節ナビゲーションシステム、リアルタイムバーチャル超音波システム
2. 診療実績
●症例数・検査数・治療>
3. 臨床研究のテーマ
1. 3Dトモシンセシスマンモグラフィを用いた乳腺診療の有用性について
2. 原発性乳癌に対する Nab-Paclitaxel, cyclophosphamide 併用療法による
Primary Systemic Chemotherapy の第Ⅱ相臨床試験
3.HER2陽性乳癌に対する Nab-Paclitaxel, cyclophosphamide,Trastuzumab 併用療法によるPrimary Systemic Chemotherapyの第Ⅱ相臨床試験
4.乳癌術後のホルモン療法中の体組成変化の検討
など
4. 研修教育方針
外科専門医およびそれぞれの専門医(乳腺、内分泌甲状腺外科)取得のために必要な手術症例の経験、学会での発表、論文作成を積極的に指導します。
短期間(1か月)での研修の場合は医師として必要な外科手技が習得できるように指導します。2か月以上の研修の場合は、外科手技の習得以外にも様々な乳腺・内分泌外科疾患の診断治療に対する理解を深められるよう指導します。
5. 今後の展望
1.本邦で初めて導入された3Dトモシンセシスマンモグラフィを用いた乳腺診療の有用性を確立します。
2.形成外科とも協力し、乳房再建術も含めた、より整容性の高い乳癌手術を行います。
3.放射線科との連携で安全、効果的な放射線治療を推進します。
4.最新の薬剤を用いた乳がん・甲状腺がん治療を安全に遂行します。
5.多職種による乳がん,甲状腺がん患者に対する全人的なサポートシステムを構築します。
6.High volume centerの使命である臨床研究を積極的に推進します。
7.Globalな治験にも積極的に参加し、医療の発展に寄与します。