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2021(令和3)年度 活動の紹介

1. 診療体制

● 診療方針

 当院の呼吸器外科は2004年から本格的に診療体制が整い、現在は高崎・西毛地区の呼吸器外科疾患に対する専門的治療を行う施設として、日々診療を行っています。

 当科の特徴の一つは、基本的に胸腔鏡を用いることで患者さんの体にやさしい低侵襲な手術を行っている点です。早期の肺癌であれば、最大3cmの創部といくつかの小さな創部での手術が可能となります。従来の肋間を大きく開ける開胸手術と比較し、出血量の軽減や術後早期の肺機能温存、疼痛軽減が可能となり、早期の退院、社会復帰が可能となります。現在、全手術の約9割が胸腔鏡下手術となっており、術後の退院までに要する日数は、肺癌では4日前後、縦隔腫瘍や自然気胸では2日前後となっています。

 また近年は、症例により一つの小さな創部から手術を行う単孔式手術も積極的に行っています。肺機能の温存を図るという意味での縮小手術として、従来の肺葉切除より小さな切除範囲となる区域切除にも積極的に取り組んでいます。患者さんの負担軽減を第一に心がけています。

 一方で、進行肺癌に対する拡大手術も行っています。気管支形成、血管形成、胸壁切除再建などの技術を用いて、肺癌の根治を目指しています。呼吸器内科、放射線科と連携して行う術前導入化学放射線治療後手術もその一つです。他臓器浸潤肺癌に関しても、総合病院の利点を最大限に活かし、心臓血管外科・外科・乳腺・内分泌外科・形成外科・整形外科等と協力して安全に他臓器合併切除に取り組んでいます。負担軽減を目指すことのみならず、安全に確実な肺癌の根治を目指すことが最も重要だと考えています。

 また当科は転移性肺腫瘍、肺良性疾患に対しても充実した診療を提供しています。

 気胸の治療にも積極的に取り組み、胸腔ドレナージから手術まで一貫して対応しています。若年のやせ型男性を中心に発生する原発性自然気胸では、整容面にも配慮したより創部の少ない胸腔鏡下手術で治療を行っています。全身麻酔が困難な不安定な病状の方に対しても、意識下(局所麻酔下)胸腔鏡手術を行うことで気胸治療を可能にしています。また、月経随伴性気胸などの女性気胸に対しては、当院婦人科や他医療機関と共同しながら治療を行っています。呼吸器内科と共同し、難治性気胸に対する気管支充填術(EWS)も行っています。

 膿胸は早期の治療介入が必要となることがあり、胸腔ドレナージや胸腔鏡手術を含む治療方針を速やかに呼吸器内科と検討した上で実行しています。有瘻性膿胸は治療に難航することがありますが、気管支充填術の併用や形成外科との協力により良好な治療効果が得られています。

●医療設備

 ハイビジョン胸腔鏡システムを用いて、ICG(インドシアニングリーン)蛍光ナビゲーションによる肺区域切除を導入しています。また、3D−CT画像システムを用いて、術前に詳細な手術シミュレーションを行い質の高い手術を行うことが出来る体制を整えています。術前CTガイド下リピオドールマーキング・Cアームによる術中透視システムを併用した、微小な肺病変の確実な切除にも取り組んでいます。

● スタッフ

 経験豊富な呼吸器外科専門医の常勤医師2名で診療を行っています。

2. 診療実績

●症例数・検査数・治療

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 2004年の呼吸器外科開設以来、手術症例数は年々増加しています。2021年は年間240例を超える全身麻酔下手術を行っています。加えて、意識下気胸手術や局所麻酔下気管切開術も行っています。

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 手術症例の約半数を原発性肺癌が占めています。それ以外に、転移性肺腫瘍、良性肺腫瘍、縦隔腫瘍、悪性胸膜中皮腫、気胸、膿胸、胸部外傷と、幅広い胸部疾患の治療を行っています。2021年度の手術症例の約9割が胸腔鏡下アプローチでした。

3. 臨床研究のテーマ

・ NEJ034試験:特発性肺線維症(IPF)合併非小細胞肺癌に対する周術期ピルフェニドン療法の術後急性増悪抑制効果に関する第III相試験(North East Japan Study Group研究)

・ 間質性肺疾患に合併した気胸症例における治療方針と治療成績の前向きリアルワールドデータ調査(平成31年度NHOネットワーク共同研究)

・ 胸腺上皮性腫瘍の前方視的データベース研究(肺癌登録合同委員会 第8次事業)

・ 2021年に外科治療を施行された肺癌症例のデータベース研究(肺癌登録合同委員会 第11次事業)

・ 切除可能原発性肺癌におけるFAM83G発現の臨床病理学的検討(埼玉医科大学国際医療センターとの合同研究)

4. 研修教育方針

 当院は呼吸器外科専門医合同委員会の専門研修連携施設として認定されております。そのカリキュラムをもとに、研修医に対しては一般的な外科的手技の習得をはじめとして、胸部疾患に対する基本的な処置(胸腔穿刺や胸腔ドレーン挿入など)の習得を目指すことを方針としております。また呼吸器外科専修医に対しては、呼吸器外科全般の手術手技の習得をはじめ、手術方針の決定、術前・術後管理などを呼吸器外科の基本的な知識とともに習得することを目的とします。カリキュラム終了時の呼吸器外科専門医の取得を目標とします。

5. 今後の展望

 低侵襲性のみならず、より安全性、根治性を高めることを目指した術式を引き続き追及していきます。ロボット支援下内視鏡手術導入も進めています。また、国立病院機構や群馬大学、日本呼吸器外科学会との共同研究にも力を入れ、臨床のみならず研究分野においても充実を図ります。

 今後も高崎・西毛地区の中核病院として、最新の知見に基づいた専門的治療を提供できるよう努めてまいります。

呼吸器外科