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トップページ > 診療科 > 呼吸器外科 > 2022(令和4)年度 活動の紹介

2023(令和5)年度 活動の紹介

1. 診療体制

● 診療方針
 当院の呼吸器外科は2004年から本格的に診療部門の体制が整い、現在は高崎・西毛地区の呼吸器疾患に対する外科治療を専門的に行う施設として、日々診療を行っています。
 当科の特徴の一つは、基本的に胸腔鏡を用いることで患者さんの体にやさしい低侵襲な手術を行っている点です。1~4つの小さな創部での手術が可能となりますので、従来の肋間を大きく開ける開胸手術と比較し、出血量や疼痛の軽減、術後の肺機能温存により、早期の退院、社会復帰が可能となります。現在、全手術の約9割が胸腔鏡下手術です。術後の退院までに要する日数は、肺癌では4日前後、縦隔腫瘍や自然気胸では2日前後となっています。

◎原発性肺癌
近年は、肺機能の温存を図るために、従来の肺葉切除より切除範囲が小さい区域切除に積極的に取り組んでいます(縮小手術)。また、症例により一つの小さな創部から手術を行う単孔式手術を積極的に行っています。患者さんの負担軽減を第一に心がけています。
2023年12月よりダビンチXiシステムを導入し、ロボット支援下手術を開始しています。胸腔鏡下手術と同様、小さな創部からの負担の少ない手術が可能となります。ロボット支援下手術は、(1)自然な3D画像下の拡大視効果、(2)手振れ防止機能、(3)多関節機能、などにより、狭い胸腔内でより精密に癌を切除できる可能性が報告されています。また、疼痛軽減効果に関する報告もあります。
一方で、進行肺癌に対する拡大手術も行っています。気管支形成、血管形成、胸壁切除再建などの技術を用いて、肺癌の根治を目指しています。呼吸器内科、放射線科と連携して行う術前導入化学放射線治療後手術もその一つです。他臓器浸潤肺癌に関しても、総合病院の利点を最大限に活かし、心臓血管外科・外科・乳腺内分泌外科・形成外科・整形外科等と協力して、安全な他臓器合併切除に取り組んでいます。患者さんの負担軽減を目指すことのみならず、安全に確実な肺癌の根治を目指すことが最も重要だと考えています。

◎転移性肺腫瘍
総合病院であるため、大腸癌肺転移をはじめとする転移性肺腫瘍の切除症例も増加傾向です。切除適応を慎重に判断し、より低侵襲に肺病変の切除を行うことにより、診断・治療に結び付けるように心がけています。

◎縦隔腫瘍
肺癌と同様に、従来からの低侵襲な胸腔鏡下手術に加え、ロボット支援下手術を開始しています。胸腺腫などの前縦隔腫瘍や神経原性腫瘍に対して適切なアプローチ法を選択することにより、最適な治療効果が得られるよう心がけています。

◎気胸
緊急の胸腔ドレナージ処置から手術治療まで一貫して対応しています。自然気胸、続発性気胸の他、外傷性気胸を含め、24時間体制で対応可能です。 若年のやせ型男性を中心に発生する原発性自然気胸では、整容面にも配慮したより創部の少ない胸腔鏡下手術で治療を行っています。術後の退院までの日数は通常2日ですが、症例により翌日の早期退院にも対応しています。全身麻酔が困難な不安定な病状の方に対しても、意識下(局所麻酔下)胸腔鏡手術を行うことで気胸治療を可能にしています。また、月経随伴性気胸などの女性気胸に対しては、当院婦人科や他医療機関と協同しながら治療を行っています。呼吸器内科と協同し、難治性気胸に対する気管支充填術(EWS)も行っています。

◎膿胸
膿胸は早期の治療介入が必要となることがあり、胸腔ドレナージや胸腔鏡手術を含む治療方針を速やかに呼吸器内科と検討した上で実行しています。急性膿胸に対しては胸腔鏡下に低侵襲に手術を行うことで、術後も1週間~10日程度の早期の退院を可能にしています。有瘻性膿胸は治療が難航することがありますが、気管支充填術の併用や形成外科との協力により良好な治療効果が得られています。

◎漏斗胸
他施設の専門医師と協同し、当院内での手術を開始しています。いつでもご相談ください。

●医療設備
 ハイビジョン胸腔鏡システムを用いて、ICG(インドシアニングリーン)蛍光ナビゲーションによる肺区域切除を導入しています。また、3D−CT画像システムを用いて、術前に詳細な手術シミュレーションを行い、質の高い手術を行うことが出来る体制を整えています。術前CTガイド下リピオドールマーキング・Cアームによる術中透視システムを併用した、微小な肺病変の確実な切除にも取り組んでいます。

● スタッフ
 経験豊富な呼吸器外科専門医の常勤医師2名、呼吸器外科専修医の常勤医師1名の、計3名で診療を行っています。

2. 診療実績

●症例数・検査数・治療
手術件数
 2004年の呼吸器外科開設以来、手術症例数は年々増加しています。昨年は270件の全身麻酔下手術を行っています。加えて、意識下気胸手術や局所麻酔下気管切開術も行っています。

手術症例
 手術症例の約半数を原発性肺癌が占めています。その他、転移性肺腫瘍、良性肺腫瘍、縦隔腫瘍、気胸、膿胸、胸部外傷と、幅広い胸部疾患の治療を行っています。約9割が胸腔鏡下アプローチです。

3. 臨床研究のテーマ

  • NEJ034試験:特発性肺線維症(IPF)合併非小細胞肺癌に対する周術期ピルフェニドン療法の術後急性増悪抑制効果に関する第III相試験(North East Japan Study Group研究)
  • 間質性肺疾患に合併した気胸症例における治療方針と治療成績の前向きリアルワールドデータ調査(平成31年度NHOネットワーク共同研究)
  • 胸腺上皮性腫瘍の前方視的データベース研究(肺癌登録合同委員会 第8次事業)
  • 2021年に外科治療を施行された肺癌症例のデータベース研究(肺癌登録合同委員会 第11次事業)
  • 切除可能原発性肺癌におけるFAM83G発現の臨床病理学的検討(埼玉医科大学国際医療センターとの合同研究)

4. 研修教育方針

 当院は呼吸器外科専門医合同委員会の専門研修連携施設として認定されております。そのカリキュラムをもとに、研修医に対しては一般的な外科的手技の習得をはじめとして、胸部疾患に対する基本的な処置(胸腔穿刺や胸腔ドレーン挿入など)の習得を目指すことを方針としております。また呼吸器外科専修医に対しては、呼吸器外科全般の手術手技の習得をはじめ、手術方針の決定、術前・術後管理などを呼吸器外科の基本的な知識とともに習得することを目的とします。カリキュラム終了時の呼吸器外科専門医の取得を目標とします。

5. 今後の展望

 低侵襲性のみならず、より安全性、根治性を高めることを目指した外科治療を引き続き追及していきます。また、国立病院機構や群馬大学、日本呼吸器外科学会との共同研究にも力を入れ、臨床のみならず研究分野においても充実を図ります。
 今後も高崎・西毛地区の中核病院として、最新の知見に基づいた専門的治療を提供できるよう努めてまいります。

呼吸器外科