2022(令和4)年度 活動の紹介
1. 診療体制
形成外科は、身体に生じた組織の異常や変形、欠損、あるいは整容的な不満足に対して、機能的、形態的により正常に、より美しくすることによって患者さんのQOL向上に貢献する診療科です。当院では2011年4月に新設科として設立されました。2021年4月に常勤医師が就任し診療を行っています。
形成外科では、外傷や顔面骨骨折、熱傷、傷跡の治療や、皮膚・皮下腫瘍、褥瘡や糖尿病性潰瘍、虚血性潰瘍などの難治性潰瘍、副耳や臍ヘルニアなどの先天性体表異常の治療を行っています。その他にも陥入爪や腋臭症、リンパ浮腫など様々な疾患に対する治療を行っています。
2016年に乳房再建外来を設立しています。乳腺内分泌外科と連携を図り、乳癌術後の乳房欠損に対しての治療を行っています。また、2021年に多職種からなるフットケアチームを形成し、2022年からは足の疾患外来を設立しています。糖尿病性潰瘍や虚血性潰瘍の治療や、それらの予防や早期発見、再発予防に尽力しています。
当院では乳腺内分泌外科や産婦人科、外科等での手術後、放射線照射後のリンパ浮腫に対して、リンパドレナージや圧迫療法などの複合的理学療法や、リンパ管静脈吻合術等の外科的治療を含めた治療を行っています。今後さらに体制を充実させ、地域のリンパ浮腫で困っている患者様の一助になれるよう活動を進めていきたいと考えています。
【外来担当医表】
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | ||
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診察室20 | 午前 | <手術日> | 中村 | 中村 | 中村 | 群馬大学 形成外科 |
午後 | <手術日> | 中村 | <手術日> | <手術日> |
外来、手術に関しては適宜、群馬大学 形成外科から人員のご協力を頂いています。
初めて当院形成外科を受診される方、最後の受診から6ヶ月以上経過された方は他院からの紹介状が必要となります。ただし、外傷など緊急性のある場合に関してはこの限りではありません。
2. 診療実績
2022年度の全身麻酔での手技数238件、腰麻・伝達麻酔での手技数22件、局所麻酔での手技数447件でした疾患分類手技数は下記の通りです。()は2021年度手技数。
3. 臨床研究のテーマ
創傷治療におけるDACCコーティングドレッシング材の効果について検討を行ないました。得られた知見について第14回日本創傷外科学会総会・学術集会で発表を行い、最優秀演題賞を受賞しました。同内容について論文発表を行いました。
Nakamura H, et al. Effect on bacterial load of use of a DACC-coated dressing as a wound contact layer in negative pressure wound therapy. J Wound Care. in press.
その他、日々の臨床において経験した症例や、臨床研究により得られた知見について学会・論文発表を行っています。
Nakamura H. et al. Staphylococcal Toxic Shock Syndrome after Autologous Breast Reconstruction: A Case Report and Literature Review. Plast Reconstr Surg Glob Open. 2022;10:e4710.(乳房再建術後のToxic Shock Syndromeに関する報告)
Nakamura H. et al. Negative Pressure Wound Therapy for Inguinal Lymphorrhea. Int J Surg Wound Car. 2023;4: 29-33.(鼠径部リンパ漏に対する局所陰圧閉鎖療法の有用性についての報告)
Nakamura H, et al. Negative Pressure Wound Therapy for Skin Ulceration and Fistula After Surgery for Oral Cancer. J Craniofac Surg Open. 2023;1:e005.(口腔癌術後皮膚潰瘍・瘻孔に対する局所陰圧閉鎖療法の有用性についての報告)
Nakamura H, et al. Candida Costochondritis Induced by Traumatic Small Bowel Perforation: A Case Report. Cureus. 2023;15:e43923. (カンジダ性肋軟骨炎に関する報告)
現在、糖尿病性足潰瘍や包括的高度慢性下肢虚血患者の手術におけるデックスメデトミジン鎮静下、局所・伝達麻酔手術の有用性について検討を行っています。また、糖尿病性足潰瘍患者におけるサルコペニアと血清亜鉛値、ビタミンD値との関連性について検討を行っています。その他、創傷治療におけるIntra-Soft tissue Antibiotics Perfusion (iSAP)(軟部組織内に抗菌薬を持続注入し、それをドレーンから陰圧をかけて吸引することで抗菌薬を循環させる手法)の効果について検討を行っています。得られた知見については、今後、学会・論文発表を予定しています。
4. 研修教育方針
形成外科は臨床医学の一端を担うものとして、先天性あるいは後天性に生じた変形や機能障害を外科的手技や特殊な手法を駆使することにより、形態と機能を回復させ、Quality of Life の向上に貢献する外科系専門分野です。研修教育として、この領域における知識と技能、社会性、倫理性などを備えた医師を育成すること目標としています。外傷、先天異常、腫瘍、瘢痕・瘢痕拘縮・ケロイド、難治性潰瘍、炎症,変性疾患等について専門知識と診療技術を研修し、かつ他の診療科とのチーム医療を実践できる能力を習得することを目標としています。
5. 今後の展望
2021年4月から常勤医師1人体制で形成外科診療を行ってきましたが、2023年4月から常勤医師が1人増員され、今後は2人体制で診療を行うことができるようになりました。形成外科の診療範囲は広く、今まで介入が難しかった疾患や病態に対してもアプローチが可能になると考えられます。現在、行っている乳房再建外来や足の疾患外来の充実を図り、乳房再建や創傷治療に対してさらなる充実した診療を提供できるよう尽力します。加えて、腫瘍切除後再建や術後リンパ浮腫治療など、地域がん診療連携拠点病院である高崎総合医療センターの形成外科として、専門的な治療を推進していきたいと考えています。
形成外科は日本での周知はまだまだ浅いものです。他診療科の先生方、地域の先生方に認識していただけるよう活動を行い、地域の患者様一人一人に対して最適な治療を提供できるよう努めていきます。