心臓・脳血管カテーテルセンターについて
~ センター長挨拶 (脳神経外科:佐藤晃之) ~
日本人の死因の上位は、がん、心臓病、肺炎、脳卒中の順であることは、よく知られております。このうち心臓病や脳卒中は、全身の動脈が狭くなる「アテローム血栓症」による心筋梗塞や脳梗塞が多くを占めています。2009年の米国での調査では、死因の約3割がアテローム血栓症であったとされ、がんと同様にとても怖い病気であることが示されました。日本でも食生活の内容が年々欧米化し、アテローム血栓症は徐々に増加しています。
アテローム血栓症は高血圧や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病により、全身の動脈硬化が進むことで起こります。脳梗塞の患者さんが心筋梗塞の原因となる冠動脈狭窄症を合併したり、逆に心筋梗塞の患者さんが脳梗塞の原因となる内頚動脈狭窄症を合併することがしばしばあります。このような場合、心臓だけでの治療や脳血管だけの治療では不完全となります。高崎総合医療センターでは、患者本位の治療を目指すため循環器科と脳神経外科の垣根を払い、同じチームとして協力しあう心臓・脳血管カテーテルセンターを設立しました。これは総合病院としての使命でもあり、より上質な医療を提供する取り組みの一環と位置付けています。
また、脳梗塞予防の治療にとどまらず、くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤破裂に対するコイル塞栓術や、超急性期脳梗塞に対する機械的血栓回収療法(急性期血行再建術)などの血管内治療も積極的に行っており、脳卒中を含めた総合的な脳疾患を対応しております。
~ 副センター長挨拶 (心臓血管内科 村田智行) ~
心筋梗塞や狭心症、脳梗塞、下肢閉塞性動脈硬化症、大動脈瘤といった疾患は、それぞれが生命に関わったり日常生活に大きな支障の出ることのある病態で、またその頻度もまれではありません。突然死を起こしたり、処置のしようのない状態となる前の早期の発見や治療が重要です。上記の疾患は心臓、脳、下肢、大血管といった、違う部位の異なる病気のように見えますが、全て血管の病気であることが共通点です。糖尿病、脂質異常症、高血圧、喫煙などを原因として血管に動脈硬化が起こり、その範囲は全身に及びます。
心筋梗塞や狭心症、脳梗塞、下肢閉塞性動脈硬化症、大動脈瘤は代表的な動脈硬化性疾患であり、いずれもカテーテルという管を血管内に挿入する方法での治療が多く行われます。通常、臓器ごとに治療を担当する診療科は異なりますが、多くの場合で複数の臓器の動脈硬化が併存していることから、当院では心臓・脳血管カテーテルセンターを設置し、1人の患者さんの動脈硬化性疾患を全身から評価することを可能にしております。動脈硬化性疾患は何年か経過しての再発や新たな部位での発症もあり、長期的な経過の評価も重要です。当カテーテルセンターでは複数臓器の同時のカテーテル検査を行い、患者さんの負担を増やすことなく、より広範囲の病態を評価できます。
専門科が協力して作られている当カテーテルセンターが、全身の動脈硬化性疾患の診療を充実することを目標としております。