2019(令和元)年度 活動の紹介
1. 診療体制
● 診療方針
当院の呼吸器外科は2004年から本格的に診療体制が整い、現在は高崎・西毛地区の呼吸器外科疾患に対する専門的治療を行う施設として、日々診療を行っています。
当科の手術の特徴として、基本的に胸腔鏡を用いた低侵襲な手術を行っています。早期の肺癌であれば、最大3cmの創部といくつかの小さな創部での手術が可能となります。従来の肋間を大きく開ける手術と比較し、出血量の軽減や術後早期の肺機能温存、疼痛軽減が可能となり、早期退院、社会復帰が可能となります。現在術後の退院までに要する日数は、肺癌では4日から7日、縦隔腫瘍では3日前後、自然気胸では2日程度となっています。肺機能の温存という意味での縮小手術として、従来の肺葉切除より小さな切除範囲となる区域切除にも積極的に取り組んでいます。患者さんへの負担軽減を第一に心がけています。
一方で、進行肺癌に対する拡大手術も行っています。気管支形成、血管形成、胸壁切除再建などの技術を用いて、肺癌の根治を目指しています。呼吸器内科、放射線科と連携して行う術前導入化学放射線治療後手術、悪性胸膜中皮腫に対する手術を含めた集学的治療もその一つです。負担軽減を目指すことのみならず、安全に確実な根治を目指すことが最も重要だと考えています。
●医療設備
ハイビジョンシステム胸腔鏡システムを用いて、ICG(インドシアニングリーン)蛍光ナビゲーションを用いた肺区域切除を行っています。また、3D−CT画像システムを用いて、術前に詳細な手術シミュレーションを行い質の高い手術を行うことが出来る体制を整えています。
2. 診療実績
●症例数・検査数・治療
2004年の呼吸器外科開設以来、手術症例数は年々増加しております。近年は年間200例を超える全身麻酔下手術を行っています。
手術症例の約半数を原発性肺癌が占めています。それ以外に、転移性肺癌、良性肺腫瘍、縦隔腫瘍、悪性胸膜中皮腫、気胸、膿胸、胸部外傷と、幅広い胸部疾患の治療を行っています。
3. 今後の展望
一つの小さな創部のみから行う単孔式肺葉切除、剣状突起下アプローチによる縦隔腫瘍切除など、より低侵襲を目指した術式を導入していく予定です。