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2019(令和元)年度 活動の紹介

1.診療体制

●診療方針

 放射線治療の適応は各科とのカンファレンスで決定しています。治療の基本はガイドラインや標準治療に則って施行していますが、根治治療や対症治療を問わず、高精度であると同時に、患者の負担ができるだけ少ない治療をすることを目指しています。原疾患が同じでも患者の状態により治療方法を変える必要があるのが現実であり、特に超高齢化社会を迎えた現状では、個々の患者に合わせた治療を心がけています。
 外来を中心に診療を行っており、強度変調放射線治療(IMRT)をはじめ、定位放射線治療(SRT・SBRT)、画像誘導放射線治療(IGRT)など、高精度放射線治療を実践しています。放射線腫瘍医のマンパワーが十分でないため、現時点で入院での診療を行う予定はありませんが、将来的には、放射線治療を軸に、がん患者の治療とケアを総合的に行っていきたいと考えています。

●医療設備

高エネルギー放射線治療装置 2台(Varian社製Clinac 21EX、BrainLab社製NovalisTx)
密封小線源治療装置(Bebig社製MultiSource)1台
治療計画CT(GE社製LightSpeed)1台
外部照射用治療計画装置(Varian社製Eclipse 3台,BrainLab社製iPlan 5台)
小線源治療用治療計画装置(Bebig社製SagiPlan)1台
呼吸同期解析ワークステーション 1台

2. 診療実績

●症例数・検査数・治療

 令和元(2019)年の放射線治療依頼数は424例、うち実際に放射線治療を施行した症例は369例でした。前年に比し、患者数は横ばい状態です。治療の依頼元は、約80%が院内から、残りの約20%が院外からの紹介で、例年と変わりませんでした。高精度放射線治療として施行している強度変調放射線治療(IMRT)は49例に、定位放射線治療(SRT・SBRT)を16例に施行しています。前立腺癌に対するIMRTは例年通りでしたが、前立腺癌以外の症例が増加しました。IMRTは正常組織・臓器の線量を抑えつつ、病巣部に線量を集中させる技術であり、今後も積極的に適応していく方針です。また小線源治療の症例数も安定しており、小線源治療が可能な施設(県内3施設のみ)のひとつとして,その役割が果たせていると考えます。画像誘導放射線治療(IGRT)はこれまでどおり4門以上での多門照射例には全例施行しています。

3. 臨床研究のテーマ

 がんの放射線治療においては、いかに放射線治療の効果を高めるかが命題です。空間的線量分布の改善においては強度変調放射線治療(IMRT)や定位放射線治療(SRT・SBRT)での治療症例数を蓄積し、治療成績を向上させ、有害事象を少なくするための最適な線量分布を模索していきます。同様に時間的線量分布の改善においては、高精度治療において1回線量の増加、治療期間の短縮が可能かどうか検証する予定です。小線源治療においては画像誘導小線源治療(IGBT)を実践すべく、治療計画CTとMRI画像の融合を行い、より詳細なターゲットの描出を実践しています。超高齢化社会となり、80歳を超える高齢のがん患者が目立ってきました。高齢患者に最適な治療方法を模索することも引き続き研究のテーマとしていくつもりです。
 令和元年度は当院の放射線治療の約3割を占めている乳癌に対する乳房温存療法(通常分割照射法)の治療成績についてまとめ、学会発表しました。乳房温存療法は、1回線量を増加し、治療期間を短縮した寡分割照射法が主流になりつつあります。通常分割照射法のデータは、今後、寡分割照射法の治療成績を検証する際の重要なデータになると考えています。

4. 研修教育方針

 研修医については、放射線治療の理論、方法、考え方が理解でき、実践できるようになることに加え、がんの放射線治療を通して、がん治療の全体を把握するとともに、現在のがん医療が抱えている問題点を理解してもらえるような教育をしていきたいと考えています。また医師以外のスタッフの教育にも協力できる体制を取っています。科内では、多職種のカンファレンスを定期的に行っており、放射線技師が治療専門技師、品質管理士、物理士を目指すよう啓蒙しています。また、放射線治療認定看護師の育成にも力を入れており、実習施設として、平成30年度より認定看護師を目指す実習生を受け入れています。令和元年度も2名の実習生を受け入れました。
 当院で研修できない高度な放射線治療(重粒子線治療等)や特殊な放射線治療(全身照射等)については、近隣の施設と協力して研修できる体制を整えています。

5. 今後の展望

 超高齢化社会を迎え、侵襲の少ない放射線治療のニーズはますます増加するものと思われます。最近は治療の個別化について耳にすることが多いと思いますが、現在施行されているのは、同じ原発の腫瘍を更に分類したがんの個別化が中心です。しかし、同じ原発でも患者の状態により治療方法は変えるべきであり、これはこれまで主治医の経験をもとに行われてきました。特に高齢者は、若年と同様の体力を有した元気な患者から、合併症を有した全身状態不良な患者まで様々で、若年者に比べ不均一性の程度は大きい印象があります。これらを客観的に評価し、がんのみならず患者の状態からも個別化を図れるようにしたいと考えています。一方で、放射線治療の分野においては、高まるニーズに応えるだけのマンパワーは十分と言えないのが実情です。放射線治療を担う医師のみならず、治療専門の放射線技師、品質管理士、物理士、そして患者のケアにあたる認定看護師を養成していくことも、当院のように比較的治療機器のそろった施設の役割と考えています。一方で、がん治療は患者中心の医療であるべきであり、がん治療に携わる者は、がん患者を総合的に診る能力が必要です。そのためには外来診療のみでは不足であり、マンパワー不足が解消した暁には、入院患者を受け持つようにし、総合的ながん治療を実践していきたいと考えています。
 医療機関は患者の役に立つことが第一義です。今後もより高精度の治療を実践することで院内及び地域のがん治療に貢献していきたいと考えています。

放射線治療科