独立行政法人 国立病院機構 高崎総合医療センター

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平成29年度 当診療科の活動

1.診療方針

 神経内科の診療は、現病歴聴取が4割、身体所見の診察が3割、そして画像などの検査が3割といわれており、時間が非常にかかります。てんかんや片頭痛など、アナムネをとるだけで、診断が付く疾患も少なくありません。一例をあげますと、「めまい」を主訴に受診されたパーキンソン病の患者さんがいました。小刻み歩行でスムーズに歩けないことを、めまいがして歩けないと本人が自己判断し、「めまい」を主訴としていました。患者の訴えを聞き、四肢の診察で筋強剛の確認など神経所見をとりパーキンソニズムを確認して診断、そして治療へ結び付けることができます。「めまい」の鑑別で脳MRI検査だけ施行するのでは、診断は遠のいてしまいます。一人一人の患者さんに対して、時間はかかりますが必要な診療をしていくことに主眼をおいています。病歴と所見から診断する内科学の一分野として、日頃から診療しております。

 脳卒中に対しては、脳神経外科と協力を取りつつ急性期治療を行っています。クモ膜下出血や脳内出血などの出血性脳血管障害は脳神経外科、虚血性脳卒中は神経内科で初療にあたります。アルテプラーゼ投与を当科で行い、血管内治療が必要な症例に対して脳神経外科へ同時に依頼をしております。病巣部位によっては発症後16時間から24時間と治療可能な時間幅が延長し、急性期治療の役割が重要となってきました。また脳梗塞の前駆状態となりうる一過性脳虚血発作(TIA)に対しても、積極的に取り組んでいます。血栓性か塞栓性か速やかに判断し、抗血栓治療を開始します。必要な症例に対しては、数日間の入院で頚部血管の評価などを行いつつ、脂質異常などの危険因子も管理します。TIAクリニカル・パスを導入して、必須な検査、治療を確実に行えるよう努めています。

 

2. 診療実績

 神経内科で対象となる疾病は、脳、脊髄、末梢神経、筋と広範囲にわたります。2015年4月に常勤医が2名から3名の体制となりました。病棟での入院患者診療を主に、救急対応、一般外来での診察を行っています。

 

外来診療

 神経内科では、基本的にすべてのスタッフがあらゆる神経疾患を神経内科ジェネラリストとして診療する体制を取っており、専門外来は置いていません。休診日は設けず、月曜日から金曜日の連日、交代で診療にあたっています。

 

入院診療の実績

 一日20~30名で、年間入院患者数は587名。内訳は以下のとおりです。

  脳血管障害(脳梗塞、一過性脳虚血発作) 276症例

  てんかん 89症例

  パーキンソン病ないし関連疾患 20症例

  正常圧水頭症 15症例 筋萎縮性側索硬化症 19症例

  中枢神経感染症(髄膜炎、脳炎) 26症例

  末梢神経障害(ギランバレー症候群、CIDP) 21症例

  多発性硬化症 13症例

  重症筋無力症 4症例

 このほか、以下の疾患を数例ずつ、診療した。

  神経変性疾患(多系統萎縮症、脊髄小脳変性症)

  認知症疾患(アルツハイマー病、プリオン病)

  筋疾患(多発性筋炎,ジストロフィー)

  糖原病(ポンペ病)

 

LCIG(レボドパ・カルビドパ配合経腸溶液)療法

 進行機パーキンソン病でウェアリングオフ症状が顕在化した時に、新しい治療法として2016年9月から本邦でも可能となった治療法です。内視鏡的に胃瘻を造設し、空腸に留置したチューブからデュオドーパ®を持続投与することにより、ジスキネジアの誘発なくオフ症状の改善を期待できる治療法です。消化器科医師、病棟・外来看護師の協力のもと、群馬県内で初めて、当院で導入することができました。

 

臨床検査

1.脳波(vEEG・dEEG)

 ビデオ脳波計(vEEG)が導入され、発作時の脳波を捉えることが用意に なりました。

 ヘッドセットを使用することにより、電極数が8Chと少なくなりますが簡易に脳波検査を開始することもできます。

 脳波検査結果が紙ベースから電子カルテ端末で確認できるデジタル脳波(dEEG)に移行したことにより、臨床運用上でもアクセスが容易となりました。

2.頭部CT、筋CT

3.頭部MRI・MRA・MRS、脊髄MRI

  救急患者では24時間、週7日いつでもMRI検査の撮像が可能です。

4.核医学検査(脳血流シンチグラフィー・DaTスキャン・MIBG心筋シンチ・IMZ-SPECT)

 脳血流SPECTではECDとIMPの2種類の核種から、症例に応じて選択をして検査することが可能です。

5.頚部血管超音波検査

6.神経伝導検査・針筋電図

7.重心動揺計、脈波、間接熱量計

 

3. 臨床研究のテーマ

1)高次脳機能障害

 アルツハイマー型認知症やパーキンソン病などの神経変性疾患における高次脳機能障害について、種々の神経心理検査を行い、評価しています。同時にそれぞれの認知症疾患前駆期にあたる軽度認知障害について、早期診断にも取り組んでいます。

2)嗅覚障害

 神経変性疾患の一つであるパーキンソン病では、運動症状以外に様々な症状(非運動症状)を呈する事が知られています。嗅覚低下が非運動症状の一つにあり、認知機能障害に先立ってみられることが報告されています。自覚的に気づきにくい嗅覚低下を、検査することによって早期に発見し、対応しています。

3)摂食・栄養障害

 栄養サポートチーム(NST)と協力をしつつ、入院された患者さんに対して、神経疾患における栄養状態の評価をしています。体組成計や間接熱量計を用いて、患者ごとに必要とされる栄養量を提案し、最適な摂取ルートについて検討をしています。脳梗塞急性期は高侵襲の状態であり、上部消化管の状態を考慮した経腸栄養を選択しております。一方で認知機能低下の進行に伴い、前駆期の障害で経口摂取が進まなくなった患者に対して、漢方薬を始めとする薬剤治療を模索しています。

4)てんかんと妊娠

 EURAP(European Registry of Antiepileptic Drugs and Pregnancy)は抗てんかん薬の催奇形性を検討するために設立されたヨーロッパを中心とした研究グループです。参加国は増加し、欧州に限らずアジアや南米等にも広がり、日本は2001年から静岡てんかんセンターが中心となり参加しています。当院も協力施設となり、共同研究を行っています。

 

4. 研修教育方針

 臨床研修医に対して、入院患者の回診、症例検討会、学会や研究会への参加を通じて日々の研鑽を積むように指導を行っています。専攻医に関しては、日本神経学会教育関連施設として、神経内科専門教育のためのプログラム(群馬大学脳神経内科学教室との連携)を作成しています。研修医の学習項目として、神経学的診察法・検査・手技の獲得を期待しています。日常業務では、患者の診療を行いつつ、患者及びその家族との面談、他職種との調整を行いつつ、電気生理学的検査の実施や救急時の対応などを訓練しています。経験した症例について、神経学会学術大会、群馬大学神経内科同門会・症例検討会、国立病院総合医学会といった学会で発表する機会を提供しています。

 看護師を始めとするコメディカルとも臨床研究を行いつつ、臨床レベルの向上を目指しています。得られた知見を学会で発表する援助も行っています。また院内講演会「神経難病~Takasaki~」を定期開催しています。院内外の講師による講演を中心に企画し、院外からも参加者を募り、神経疾患に対する理解を深めています。今年度は「筋萎縮性側索硬化症に対するラジカット注および麻薬の投与」と「認知症ケア」に関して開催しました。

 

5. 今後の展望

地域の中核病院として、今後も救急疾患への対応と専門医療の提供を継続していきたいと考えます。

 

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