独立行政法人 国立病院機構 高崎総合医療センター

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平成29年度 当診療科の活動

1.診療体制

●診療方針

 当院小児科は、西毛地区における小児科入院診療の中核施設の一つとして、小児科の二次入院診療を提供してきた。高崎・安中地域を対象とした二次診療を主な業務としており、隣接各地域の入院病床や医療機関の分布の状況などにより、藤岡・富岡市など西毛地区の他の市町村や、埼玉県からの受診も受けている。また、休日・夜間の時間外の小児救急においては西毛地区では2017年度は、当院、藤岡総合、富岡総合、高崎中央の4病院による二次輪番体制をとっていて、時間外の受診者は、西毛地区、埼玉県北部に広く分布している。また、各種感染症の流行により外来・入院の診療需要には波動が大きく、小児科二次診療の常ではあるが、対応の難しい点となっている。

 2017年度の常勤医師8名のうち、五十嵐が新生児、澤浦は神経、倉田は内分泌・代謝、德永・今井が 呼吸器・アレルギーとなっている。他の3名は、専門医を目指す立場で一般小児科の臨床経験を積みながらの勤務となった。また、神尾 彩乃 医師(神経)、佐藤 幸一郎 医師(呼吸器・アレルギー)、関根 和彦 医師(消化器)にそれぞれ専門外来を担当していただいた。小児の慢性疾患の診療は、希少な疾患が多いこともあって、二次病院の業務とせざるを得ない面があり、外来運営の課題の一つとなっている。

 小児外科外来を小児科外来ブースで月二回・半日ずつ開設していて、小児外科疾患の初診、定期的処置の対象患者に受診していただいている。小児科にて診断に難渋した外科的症例(可能性も含め)のコンサルトも円滑となってきていて、少ない実績ながら、大きな意味のある外来と考えている。

 周産期医療は産科・小児科(新生児)の円滑な協働が必要な分野であるがNICU(社会保険未指定)6床と南4階新生児室を有機的にリンクさせて32週以降の新生児医療の需要に対応している。高度な技術、設備を用いた集中治療を要する児は、現状では原則として群馬県立小児医療センターなどの三次医療機関にお願いしている。

 時間外診療については、小児救急二次輪番の中で、当院には月間18日~20日前後の当直(休日の日当直を含める)が回ってくるが、常勤医のうち、当直可能な医師は4名で、成育医療センターなどからのパート勤務医師にお願いして、金曜日当直、土曜日の日直当直を担当していただき、西毛輪番全体を維持する状況となっている。産休等の事情により、診療に従事できる人員が流動的な面もあるが、関係各位の助力もあって、時間外診療を含めた診療体制には大きな問題を生じることなく、年度を乗り切ることができた。

 なお、昨年度に引き続き、当直は午後帰宅する仕組みとなっていた。社会の状況から、当直医の責任時間帯前後の勤務は極力減らす必要があり、引き続きの検討課題である。

 

●医療設備

超音波診断装置 外来(生理検査より借り受け)、病棟用各1台、新生児用人工呼吸器3台、新生児用鼻腔式陽圧呼吸補助装置(Si-PAP)3台、保育器(閉鎖式・開放式)

                                                                                                 

2. 診療実績

●症例数・検査数・治療

 図1は年度ごとの小児科入院総数でここ数年間増加傾向となっている。表1は月別の入院数で、RSウイルスの流行により入院数が変動する状況がみられている。

 

図1.年度別入院数

 

表1.月別入院患者数

 

 2017年度は北4階病棟において 915例の入院診療を行った。主な疾患は表2の通りで、各種感染症、川崎病、痙攣性疾患などが主な入院診療の対象となっているが。喘息、アナフィラキシー、食物アレルギーなどのアレルギー疾患の割合も多い。また、食物アレルギーの診療に安全に対応するため、入院での食物負荷試験も実施してその例数を増やしている。少子化やワクチンの普及に伴う重症感染症減少により、小児入院需要は全体として減少していると考えられる。このため、小児入院診療にかかわる人材の確保・育成や、そのための働き甲斐のある職場環境を確保することを考えると、小児入院管理を行う施設の集中化が喫緊の課題と考えられる。これは、地域全体の小児医療を円滑・安全・効率的に運用してゆくためにも必要で、当院がその一翼を担うべく運営して行ければと考えている。

 

表2.疾患別入院患者数

 

 事故・虐待にかかわる例は確実にみられており、CAPSなどの組織を通してMSWや医療安全などの関係部門と緊密なかかわりをもちながら、将来ある子どもを守ってゆく活動への責任を感じている。

 周産期医療は地域周産期センターの指定を受けて南4階で実施し、小児科入院となった患者は主にNICU(社保認定外)管理として、一部新生児室や一般病室(退院前の母児同室や黄疸による光線療法実施患者など)で管理を行っている。

 2017年度においては123例の新生児を小児科入院として診療した。当院の新生児病棟(NICU)は在胎週数 32週以上の児を対象に入院診療を行い、病床は6床であるが、西毛地区においては、院外より新生児受け入れを行っている数少ない施設の一つとして、新生児医療においても二次病院としての診療を行っている。病床数が少ないため多胎の児の受け入れに関しては運営上難しい点も有り、入院需要の波動も大きいことから、院外よりの受け入れには対応できない日が多く、地域の関係医療機関にはご迷惑をおかけしている部分があることは申し訳ないと考えている。人工呼吸管理も必要な重症児も扱う中で、大きな事故なく運営できておちこの点は関係各位のご協力と勤務する医師・看護師等のスタッフ諸氏の努力の成果と思う。

 

表3.新生児疾患別入院数

 

 表4に外来患者の月別来院数を示す。新患 3203名 再来10.257名で、昨年度とほぼ同数であった。月別では、8月 12月 3月の学校が長期の休暇に入る月に患者数が多くなっている。8月は心臓等の二次検診により新患が多く、3月は年1-2回の定期診察による再来患者が多めになるという特徴がある。

 

表4.月別外来患者数

 

 上記のように小児の慢性疾患は、希少疾患が多く、この管理のための検査設備を維持するコストが合わないこともあって、一般診療所であまりfollowされない例が多く、慢性疾患患者の多くが病院に通院しているのが実状と思われる。当院では、主に気管支喘息などのアレルギー疾患や、てんかんなどの症例を多く扱っている。専門外来としては、神経・てんかん、食物負荷試験などが実施されている。内分泌・代謝疾患に関しては、都合により2017年度は後半実施できず、次年度の課題となっている。循環器・腎臓等については二次診療一般のレベルを超えていない。こういった分野の診療をどういったスタンスで実施するべきかは、地域の状況もみながら考えてゆかなければならない。また、発達障害や、心身症的背景を持った小児などの診療需要も多く、これも課題である。全体により体系化された外来診療体制を模索してゆくことが必要と考えるが、医師人事との調整が課題となる。また、本年度は前期のごとく小児外科外来が通年で実施された。月二回・半日のみ外来であるが、当科とのコラボレーションを進めてゆく拠点として重要である。

 救急については、西毛地域における基幹施設の一つとして県の小児救急医療支援事業の支援を受けながら、同事業での受診実績の半分程度の診療を行っていることとなっていた。

 救急患者の入院率は全患者に対しては 15%弱で、救急車搬送患者では 20%程度となっている。年間全入院患者の約1/3 程度が救急患者よりの入院となっている傾向は変わっていない。入院率は二次輪番が開始された平成18年度の3.6%から年々上昇しており、二次医療に特化した方向に流れていると考えられる。高崎市休日夜間急病診療所等の一次救急医療体制の充実や、#8000等の相談事業等による、不急の受診の減少も、背景にあると思われる。

 

3. 臨床研究のテーマ

 NHO共同研究に参加するとともに、日本小児科学会群馬地方会や、群馬県小児保健会などにおいて症例報告が主ではあるが、若手医師を中心とした発表機会を設けている。また、上級医はその専門分野において、研究日に群馬大学小児科等での研究活動を行い、その成果を学会などで、発表してきている。

 

4. 研修教育方針

 2017年度は日本小児科学会認定の小児科専門医5人を擁している。2011年度により日本小児科学会専門医研修施設の指定を受け、専門医を目指す後期研修医などの若手小児科医の育成も重要な役割となっている。2018年度以降も新たな専門医制度のもとで、これまでの実績を踏まえた研修・教育を実施してゆきたい。当院は入院症例が比較的充実していると自負しており、小児科専門医を目指す若手医師に小児科医としての基礎を症例を通じて身につけていただくこと、初期研修医には小児医療の具体的イメージを明確にしていただくことと、小児への臨床的アプローチの特徴を理解していただくことを目標として、研修の指導を行っている。研修内容の実際は、ともすると流行疾患により左右されがちであり、上級医とともに臨床に取り組んでゆくなかで、一定の成果が上がる充実した研修が積んでいただけるよう配慮してゆきたい。

 2017年度も新生児蘇生法(NCPR)一般コースの研修会を一回実施することができた。小規模ではあるが、職員の基礎的スキルのbottom upに少しでも貢献できればと願っている。

 

5. 今後の展望

 県内の小児科医は全体では増加しているが、二次病院に勤務する医師の総数は横ばい程度で、当直勤務への対応が可能な医師の数は漸減傾向である。年齢構成と勤務先を見ると、30代~40代くらいの年齢で、家庭などの生活環境の変化を反映して、群馬大医学医局のローテーションから勤務先を変えたり、日勤中心の勤務へ変わったりする傾向が多く見られる。臨床医としての専門医資格の管理が変化してゆく中で、小児科専門医の育成カリキュラムが人事面での自由度を縛ってゆく状況もあり、この影響はいずれ当院小児科の運営にも影響してくるものと推測される。

 一方、群馬県の出生数は引き続き減少傾向で、予防接種の普及や、抗ウイルス薬などの治療の変化とともに、二次入院医療を必要とする感染症も減少すると考えられる。この変化が、小規模施設の散在という状況につながると、地域全体の診療レベルを質・量ともに低下させることにつながることが懸念される。

 医療は人材がなければ実施できないので、群馬県の小児医療を安定し提供できる体制を確保するためには、診療・教育・研究のバランスをとりながらこの地域を足場とする意欲あふれる医師を育ててゆく以外に道はなく、これと診療レベルの維持を両立させるためには、診療拠点の重点化は避けて通れない課題と考えられ、これにより ①原則として男女を区別しない交代勤務の実施 ②時間内・時間外の医師配置の再検討 ③医師の活動をサポートするためのインフラ(例えば24時間保育および病児保育)等を考慮しながら、10年・20年と長期にわたって燃え尽きることなく働き続けることのできる体制と作っておくことが重要と考える。これには従来の二次医療圏の枠を超えた、広域での医療提供体制の構築が必要となり、一医療機関の努力において達成できることではない。しかし、こうした認識は徐々に広がりを持ってゆく可能性があると考えており、当院小児科としても、こうした展望を意識した上で院外諸期間との密接な連携を図りながら、「拠点として選ばれる病院」となることも意識して、果たすべき役割を担ってゆけるように努力してゆきたいと考えている。

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